「小さないのち」会報--会報 No.64
ホーム
お知らせ 会の紹介 こころのケア 書籍販売 リンク一覧 会報
最新号
一覧へ
Pfizer
2006年10月21日
会報 No.64
こころの扉(会報41号)              平成15年 月

こころの扉(会報64号)               

     平成1810

    発行 小さないのち


 

存在の証 戸籍の名前

                      会員 東城 直枝

 

今年は9月の声を聞いた途端、一気に秋の空気が広がってきました。

さて、この夏、関西地区の新聞二誌(神戸新聞、朝日新聞)にある記事が掲載されました。今日はそのことについてお話しさせていただきたいと思います。

 

私たちの小さい子どもの遺品は数限られています。入院中のカルテでさえ子どもの遺品となるため、後日、病院から取り寄せるご両親は多いようです。

我が家も例外ではありませんでした。

2004102日に旅立った息子、菰淵葉の1周忌を目の前に、昨年の初秋、さっそく大学病院にお電話してみました。取りあえず必要書類を用意して送って欲しいと言われました。

・診療記録の開示申請書

・戸籍謄本

・運転免許証または健康保険証の写し

IDカードの写し

私は急いで戸籍謄本を取るために区役所の出張所へ向かいました。

しかし、そこで思いもしないショッキングなことを知らされたのです。

 

現在、全国では戸籍のコンピュータ化が行われているそうです。我が家の戸籍がある東京都世田谷区では20057月に完了したと告げられました。

これまでの縦書きから 横書きの戸籍証明書になりました。用紙もこれまでのA3版白紙からA4版サイズに変わり、公印も朱肉印から電子公印(黒色の印)になりました。

そして、それに伴い婚姻や死亡によりすでに籍を除かれている家族は、電子化後の戸籍には記載されなくなったというのです。

つまり。葉の名前は新しくなった戸籍に記載されていないのです。

産まれたことも亡くなったことも。

受付で人目もはばからず涙がボロボロ止まらなくなってしまいました。

 

今回のように、亡くなった家族の証明が必要な場合は「平成改製原戸籍」を請求することになります。これは改正以前の縦書きの戸籍です。

しかし、これも100年間だけしか保存されず、その後消却されてしまいます。

 

もともと離婚、死亡などで戸籍をはずれる場合、名前に×をする戸籍の記載方法には大反対でした。でも、いくらなんでも名前の記載そのものを消すことはないのではないでしょうか。せめて生存していた記録ぐらい残しておいて欲しい。消すくらいならいっそ家族単位の戸籍なんか止めてしまえばいいのに。個人単位だったらここまでのショックは受けなかったと想うのです、

ちなみに電子化後の戸籍では、家族がなくなった場合×はつきません。「死亡により除籍」と言葉で明記されます。その点では優しい改正がなされたと言えるかもしれません。

 

しかし一体なぜこんなことが起きているのでしょうか?

こんな規則があるそうです。

 

戸籍法施行規則第37

戸籍法第百八条第二項 の場合には、

届書に添附した戸籍の謄本に記載した事項は、

転籍地の戸籍にこれを記載しなければならない。

但し、左に掲げる事項については、この限りでない。

 第三十四条第一号、第三号乃至第六号に掲げる事項

 削除

 戸籍の筆頭に記載した者以外で除籍された者に関する事項

 戸籍の筆頭に記載した者で除籍された者の身分事項欄に記載した事項

 その他新戸籍編製の場合に移記を要しない事項

 

記載してはいけないとは書かれていません。

「この限りでない」

しかし、役所の方々の解釈は私たちの受けるニュアンスとは少し違います。

「これはつまりは記載しないということなのです!」

と得意そうにおっしゃるのです。

 

除籍された家族の証明が必要な場合は、「平成改正原戸籍」という書類が発行されると先程お伝えしました。悲しい出来事が何事もなく普通に過ごされてきた方たちは

「お子さんの名前はそこにあります。よかったですね。それで問題ないでしょう?」と、

これまた得意そうに私たちに教えて下さいます。

 

しかし、私はその事実の前で

大事なわが子を2度失い

大事なわが子と2度引き裂かれたような

心臓が突き刺されたような痛みを感じ

言葉では言い表せない精神的な打撃を受けたのです。

 

小さな子はどんな団体にも所属していません。

健康保険からも、住民票からも、預金通帳からも名前ははずされていきます。

唯一家族のつながりを証明してくれると信じ、生きる心の支えだと信じていた戸籍にまで私たちは引き裂かれてしまったように感じました。

 

戸籍は、元来相続などの身分関係を明確にしておくためのシステムで

「その人が生きていた」ことを証明するものではないのだそうです。

 

ですが、少し観点は違いますが、先日ある記事が日本経済新聞に載っていました。

通常の除籍簿は80年間保存されその後消去されるのですが、愛知県の豊橋市では今年それを「まだ必要」と議会が動き、消却延期の決定したのだそうです。

規則は規則のためにあるものではありません。

規則は私たちのためにあります。

勇気を出せば見直すことは可能なはずなのです。

 

こんなことならコンピュータ化なんかしなくていい。

なぜこんな作業が行われているのでしょう?

 

今回の電子化は、1994年から「戸籍の簡明化、及び事務効率の向上のため」に始まっているのだそうです。各自治体によって進行状況は違いますので、まだ電子化前の地域も残されています。

 

ここで私には疑問がわいてきました。

戸籍は親子二代だけのものです。その中の誰かが亡くなって、今回のような戸籍の改正が行われたとき、除籍されていた家族は削除されます。

簡明化と事務効率の向上のために。

でも家族が生きている間は、その除籍されている家族の証明が必要な場面だって必ずあるはずなのです。私たちのように。

その度にゴソゴソ古い紙の戸籍を倉庫から引き出してくるの?これは簡明化と事務効率の向上という目的に反していないの?それなら全てコンピュータのデータベースにあげておいた方が、よっぽど簡明化と事務効率の向上のために役立つのに。

 

国が採用したマザーコンピュータが、どのような規模で、どのようなシステムになっているのか私にはわかりません。

コンピュータ化後の戸籍が、今後改正のたびにどのように処理されていくのかも詳しいところはわかりません。

詳細を伺おうと法務省の責任者につないでもらおうと以前お電話をしてみたこともあります。

でも、お電話も面会の申し入れも取り次いではいただけませんでした。

名もないひとりの母親では相手にならなかったようです。

 

私は全ての人を電子化された戸籍に載せるべきだとは考えていません。

でも、手数料を払うなどの事務手続きを経た希望者にだけでも、特例を認めていただく改正はできないものか、と思うのです。

 

私の周りにはこの事実を知っている方はほとんどいませんでした。まずは多くの方に知っていただこう。その想いから、先日二社の新聞紙上で記事にしていただきました。

2006724日神戸新聞朝刊

200697日朝日新聞朝刊(関西版)

 

現在、改正を求めていくための良い方法をいろいろな角度から模索していますが、私は法律に詳しくありません。法律に詳しい方の情報や良い案がございましたらご意見をお寄せ下さい。

そして、いつか法務省と直接お話しできる日がきましたら色々質問をしてみたいとも思っています。一緒に聞いてみたいこと、疑問に思っていることなどございましたら。そちらもぜひこちらにお寄せ下さい。

ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

Eメール yohyo@ka2.so-net.ne.jp 

 

                                東城 直枝