第19回日本外来小児科学会

2009/06/04

2009年8月29日〜30日
大宮で開催されます。

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【学会抄録から】

グリーフケアをかなえる家族とのかかわり

小さないのち 代表 坂下 裕子

「小さないのち」は、急性脳症により重い後遺症を残した子どもの家族と、さまざまな病気により子どもを失った家族、そして不慮の事故により子どもを失った家族が集う自助グループで、1999年に発足した。
医療の進歩に伴って治療の限界を迎えた患者の長期生存が可能となり、延命治療の差し控えについての議論が行われるようになってきた。小児医療においても、2008年に、絶対予後不良の小児患者に関する「看取りの医療研究班」が発足し、次いで日本小児科学会でも「小児終末期医療ワーキング」が設立された。看取りについての話を進めるとき、欠くことができない課題となるのがグリーフケアである。グリーフとは、死別の悲しみをいう。家族が抱くさまざまな感情に対する配慮が不十分なまま、看取りだけが充実することはあり得ないからである。
かつては親族で迎え地域で支えていた人の死が、病院に場を移すようになって久しい。そして死は医療者にとって敗北を意味した時代から、患者の死の迎え方だけでなく、そのとき家族をどう支えるかまで、医療の枠組みのなかで考えられるようになった。しかし、未だ対応はさまざまであり、まさに過渡期を感じさせる。
死別の悲しみは、個別性が大きく扱いが難しいうえに、とりわけ子どもとの別れとなると、医療者といえども無力に駆られることだろう。しかし、「小児科でよくしてもらった」と語る遺族は多く存在する。グリーフケアの手引書など存在しないなか、心を駆使して家族と向き合った医療スタッフの実践を報告するとともに、深い悲しみに届くケアとはどのような配慮に裏付けられているものか、病院だけでなく開業小児科への期待を念頭に置きながら検証したい。