お母さんから受ける影響

2008/09/15

「小さないのち」を立ち上げて、もうすぐ10年になる。
当初は後遺症グループの人たちとも交流し、会報も書いていた。
同じように突然病気になり、亡くなる子と一命を取り留めて重度の障害をもつ子とは、
たどった道はそれほど違わないと、そのときは考えていたからだ。
けれども、生きているということは本人にも家族にも生活があり、
分からないことが私には多すぎるため、運営から外れていった。
そうして何年か過ぎ、今年からまた少しずつ後遺症グループとの接点を広げている。
共通体験はなくても、自分にできることがあるのではないか、と思うようになったからだ。
今年から後遺症会員のつどいにも出席している。

 Kさんとお会いしたの6年ぶりくらいだった。
Kさんの3番目のお子さんも重度障害をもって暮らしている。
お兄ちゃんたち大きくなったでしょう。もう大人ですね。
懐かしくて尋ねてみると、
お兄ちゃんたちは、なんと理学療法士と作業療法士になっていた。
スゴイと思った。きょうだいはこんなふうに成長するんだと。
ところがお母さんの表情は硬く、視線を落とされた。
「妹が障害をもって、私の苦労を見て、私の影響で職業の選択を狭めたんじゃないかと」
そんなふうに思うんだー 親って。
他人が、スゴイ、えらい、感動だ。と思うのは軽々しいと思った。

 同居している姪は、大学を出て、商社に就職して、虚無感を感じるようになり、退職し、
いまは作業療法士の資格を取るために専門学校に通っている。
4年間かけて、かなり高度な専門課程ときびしい実習をこなして、国家資格を取る。
そこにどんな魅力を見ているのだろうと、いつも思う。

 昨日一緒にいた知人が理学療法士なので、尋ねた。
きょうだいが障害をもつと、職業の選択にも影響あるかなあ?
「んーあるかもしれない。でもこの職業、それだけで選ばないと思う。
もしきっかけがそうでも、きっとやりがいと出会ってやっているんだと思う。
やりがいが得られなければ私は続けてこれなかった。」
彼女がそう言い切る言葉から、
Kさんの息子さんたちにもし母親の影響があったとしたら、
芯のしっかりした、志の高い育ちの部分じゃないか、と思った。