シュークリーム10個も食べさせてごめんなさい。

2009/03/26

あつ君の話の、さらに後日談です。

発達障がいをもつあつ君のことを、
階上の住人にも話しました。
(私の家は、階下に私の両親が暮らし、階上に同居人が住んでいます)
彼女は子どもの発達の勉強をしているので、ピンときたようで
1冊の本を貸してくれました。
ニキリンコさんという、翻訳家のエッセーです。

ニキさんも発達障がいがあるそうで、
小学1年生のとき、雨の日に花に水をあげていました。
お当番をさぼったりしない、まじめな子なのです。
この本を読み進めるなか、私は過去に大変な過ちを犯していたことに気づきました。

もう20年も前のことです。
当時私は音楽教室を営んでいました。
生徒さんの目線に立って会話し、レッスンしているつもりでいました。
そして、みんなととっても仲良しでした。
でも、ほとんど仲良くなれなかった、ともちゃんという女の子がいました。
何年間も、毎週会っていたのに、です。

めったに口をきいてくれなくて、
私は目を見て話すのに、私の目は見てくれない…。
ピアノは好きなようで、だいたいの曲が楽譜を見るなり弾けました。
(ただし弾き方は一本調子で、表情のないもの。)
どういう事情でやめたのか、思い出せないので、
私はともちゃんがやめたとき、ほっとして終わったような気がします。

ニキさんの本を読み、何で今まで気がつかなかったのかと、悔いて、反省しています。
ともちゃんは、私と話したくないとか、私を好きになれないということは
なかったのだと思いました。
私がともちゃんをまったく理解できず、わかろうともしていなかったのです。

レッスンは、下校が遅れる子がいると、時間が押してしまいます。
待たせなければならないのがともちゃんだと、私は過剰に気を遣いました。
ちょうど頂き物のシュークリームがあったので、
箱ごとテーブルの上に置いて、「食べて待っててね!」と言いました。
ともちゃんは返事をしませんでしたが、じっと待っててくれました。

前の人のレッスンが終わり、ともちゃんの方を振り返ったとき、
私は目を疑いました。
箱がからっぽ…。
10個は入っていたはずです。
ともちゃん、ぜんぶ食べたの?と尋ねると、
首をたてに振りました。
私は、この子は頭はいいけれど、やっぱりおかしいと確信しました。
腑に落ちたようにそう思ったので、そんな表情を見せたに違いありません。
もっと怖いのは、
「ほかのお友だちも食べたいのよ」
とまで言ったような気もしてきました。

ともちゃんの発達が、障がいの領域に入るのかどうかは、わかりませんが、
全体像から考えて、最近ようやくわかってきた発達の問題をもつお子さんだったことは
間違いないように思います。

ごめんね、ともちゃん。
「遠慮しないで、シュークリーム2つくらい食べてね。
おいしかったら、3つ食べてもいいよ」と、
何で、わかりやすく、言わなかったんだろう。
お皿に分けてから出せばよかった。

「これを食べて待ってて」と「先生」から言われたら、
待っている間にぜんぶ食べなければならない。と思うよね、
きっと気持ち悪くなったでしょう。
気持ち悪くても、先生の言ったとおりしてくれたんだね。
ともちゃんは、いまどこで、何してるだろう・・・
会って謝りたいです。