ずっと黙ったままの時間と、空気、私はすきです。

2009/08/19

またテレビが来た。
前回は、伝えてほしいところを全部削っていたので、断ったのだけれど
会の紹介もします。と言ってくれたので、出ることにした。
こういう家族会を、ずっと探している人が、いるかもしれないので。
今晩の放送なのだそう。報道ステーションという夜10時からの番組。
今年、7人のお子さんが、新型インフルエンザの脳症になり
2人が重症で、いま治療中だと聞いた。
つらいことだと思う。

この子は、インフルエンザ脳症ではないようだが、
急性脳症から一気に脳死状態になったお子さんの病室を、毎週訪ねている。
同じペースを保ちたいので、訪ねるのは週に1度とし、
できるだけその日の、お母さんの心もちに合わせるようにしている。
お母さんが、話がたくさんあるときは、たくさん聞き
お母さんが、話せない気分のときは、黙って向き合っている。
黙って、とは、ほんとうにお互い何も話さず、ずっと沈黙が続く。
お子さんが眠るベッドを挟んで。
ベッドを挟んだ間隔が、向き合って座ったときに、ちょうどの距離に思える。

黙ってしまわれると、居場所を失うようなことを、よく聞くが
私は、相手さえ苦痛でないなら、黙って一緒にいることが、とても好き。
黙っているほうが、一緒にいる感触が濃く、
私も、ゆっくり、お子さんのことを考えることができる。

1つのテーマ(子どもの生命という)と、じっくりと向き合う作業を、
それぞれに、でも一緒に、しながら過ごせるひとときは、心の静けさを感じる。
この沈黙が充満した空気に、私は随分支えられている。
言い換えれば、いつも沈黙を大事に共有してくれるお母さんに、助けられている。
もし私に言葉をたくさん求められたら、持っていないのだから。

  なぜ、突然、この子が、こういう病気になり、
  なぜ、いつまで経っても、目を覚ましてくれないのか。

お母さんが、繰り返し考え、苦しんでいるのは、
おそらく、このあたりの問いに対してだろう。
これについて、現在の医学で明確な回答は出てこないし、
運命で考えたなら、答えはさらに謎となる。

  この先この子は、どうなるのだろうか。

それを尋ねられたら・・・
私も、その答えは知っている。
でも、話すのは、ほんとうにつらい。
だからといって、話題を反らして無難な話に逃げたりなんかせず、
私は、しっかりと聴く。ということと、
じっと、いる。ということだけ、丁寧に重ねていこうと思う。

もちろん、祈る。ということも、やっぱりしている。
あの子が目を覚ますことだけは、難しいだろうけれど、
お母さんに、現実を受け止めるちからと、
お母さんが生きていくためのちからを、授けてほしい。