皮膚科潜入ルポ―魔法の手をもつベテラン看護師

2009/09/16

腰(ほぼおしり)の腫れ物の手術をしてきた。
手術といえば、丸いでっかいライト。
かなり威圧感がある。これを見て、
少し前に、ある小さな男の子のお母さんが
「子どもは親と離れ、ああいうライトを一人見て、手術を受けたんだ」
と回想された話を、聞いたことを思い返した。

局所麻酔の注射がとても痛く感じ、うう〜と言ってしまったのは、
自分でも大げさに思えたけれど、
これは、日常的に受診する歯医者さんでの治療が
ほとんど痛みを感じさせないように進化したからではないか、と思う。
痛みに耐える、ということが生活のなかでなくなっていることに気づく。

麻酔を打つなり、切ろうとしている気配に
ぎぇ、まだ効いてないんとちがうん!と思ったが、
効いていたらしい。メスが突き刺さっていることは、分からない。
しかし手が触れる感触はとてもよくわかるので、怖くて仕方ない。

そう思っていると、やっぱり、イタタタタッ!
我慢の限界で、麻酔を足してくれた。
怖くて仕方がないのは、先生が若すぎるから、のようにも思うし
コギャルみたいな化粧のお姉ちゃんだから、のようにも思うし、
私が「怖がり」なだけではないと思う。

腹ばいのまま、思い続ける。
やさしさのない台だ。
人間、仰向けと、うつ伏せでは、あんばいが違うだろうに。
顔はどこに置けばいいことになっているの?
できれば、両手をどこかに握らせておいてほしい。
自分の腕を握っているしかなく、
握られる腕のほうも、たまったものではない。
といっても、台は台でしかなく、
この台に工夫を凝らさない病院に、やさしさが欠けているように思う。

全身筋肉痛で、へとへとになった。
だいぶん縫っていたので、大きく掘り返したように思うが
30分くらいで終了。

例の年配看護師さんは、
相変わらず子どもに言うように、なだめてくれるのだけど
私のなかで、1つ明らかになった。
同情するなら、握ってて!なのだ。
私がぎゅーっと両腕を握っている姿に、
肩を両手で握ってくれた。
これは非常に有難かった。
「はいはい、こわくない、こわくない」
みたいに言ってくれるのは、私には無意味だったけれど、
ぐっと握ってくれると、不思議なもので
怖さと、痛さまで、いくらか吸い取ってもらえるようだった。

私は、看護の学生の授業に行くとき
「看護師の手は魔法の手」の話しをよくする。
病気の子どもたちから教えてもらう話しとして、していたが、
実際自分が、台の上の患者になり
ほんと、魔法の手かもしれない!と思った。
「こわくない、こわくない」は魔法の言葉には程遠かったけど。