宝塚はやっぱりスバラシイ

2011/07/20

少し前に、あるご遺族に誘われ、ゴスペルコンサートに行った。
私は、音楽は聴かなくなって久しく、
コンサートやリサイタルに行くということは
考えられなかったのだけれど、その方から
音楽がまた楽しめるようになった、というお話しを伺ったとき
ああ、よかった、と思った。
小学生のお嬢さんを少年犯罪で失うという
癒しがたい苦しみを負った方が言う言葉だけに、重みあった。
帰り道、
こんど行くときは、自分で選んでチケットを買おうと思った。

そして、思いがけず、ネットで
行こう!と思うコンサートを見つけた。

あれは、中学生のころ。
初めて観た宝塚歌劇で、ベルサイユのばらが上演されており
マリーアントワネットに魅せられ
自分もこれがしたい!なる!なんて思い込んでしまった。
以来、声楽はもちろん、バレエのレッスンにも通い詰めた。

数千円たまれば、始発の阪急電車に乗り、
宝塚駅の1つ手前の駅、宝塚南口駅で下車し、
猛ダッシュでチケット売り場へ走った。
何時間も路上で並んだであろう苦痛が、記憶にないことから
待っていることさえ楽しかったにちがいない。
あと何時間という、どきどき、わくわく。
一番前の席が取れたこともある。

結局のところ、入団など諦めるしかなく、音大に進学していったが
あんなに夢中になって追いかけたものは、それからも、ほかにない。

行こう!と思ったコンサートは
マリーアントワネットを演じていた初風諄さんのコンサート。
なんと今年70才。
あまりにも変っていたら、どうしよう。
声は、出るのだろうか、と
期待だけでなく、不安に緊迫しながら会場に向かう。

驚いた。
とても若く、美しく、
声は、昔とほとんど変らぬ、しっかりとしたメゾソプラノ。
低音も高音も、非常に艶があって、よく伸びて
終始安心して聴くことができた。

基礎がしっかりしているということは、すごいと思った。
もちろん、今も日々努力されているのだろう。

体力的に、能力的に、年齢的に
自信や希望を失ったり、諦めたりすることが
何かと多いこの頃だったけれど
私には、まだ時間があると思えた。
もう音楽に戻っていくことはないと思うが、
自分に与えられた役割のなかで
無限の可能性さえまだ秘めているような気持ちになれた。