また口走ってた

2013/07/05

あゆみが倒れたとき
救急車を呼ぶのは初めての経験だったが
迷うことはなかった。
それだけの事態だったから。

しかし「それだけ」の事態でなければ
救急車というのは、気安く呼べるものではないと
当時も思っていたし、今も思っていて
どうしよう・・ と悩んだ。

夜中に、駅から自転車で帰ってくる途中
人が、道ばたに横たわっていたのだ。
3メートルくらいまで近寄ってみたが
それ以上は行けなかった。男性だから。

女性だったら、近づくだけでなく、触れたりもしただろう。
男性でも、かなりのお年寄りだったら、そうしただろう。
若くなくても、老人でもなさそうな男性には
真夜中、人けのない暗闇で、至近距離まで行くことができない
ということがわかった。

夜中にもかかわらず、私は人から預かったお金を身に付けており
倒れた「ふり」の男であったら、困る。
奪われるのはいやだし、怪我するのはもっといや。

必死で自転車をこぎ、猛スピードで家に帰った。
父さん!
人が倒れてる!!
死んだら困るう− 
後悔したくないもん!

また口走っていた。
「死んだら困る 後悔したくない」
私には、これが、こびりついているのだ。

ダンナはすぐ表に出てくれて、
私が放り出していた自転車にまたがり
私は、ほこりだらけの空気の抜けた自転車にまたがり
現場に向かうと、
男性は横たわったままだった。

物陰に人の姿があり
「いま警察に電話しました」と言ってくれた。
二十歳くらいの若い男の子。
よかった。私たちの到着より、少しでも早くて。
そのまま付き添ってくれるようなので、帰ってきた。

事故なのか、病気なのか、酔っぱらって寝ているのか
結局のところ、わからないままだが
あのように若い男の子が、他人に無関心ではないことと
ダンナが飛び起きて走ってくれたことに
ああ、よかったと、小さなしあわせを感じた。