父の知らない母の死

2014/04/16

母は、最期まで家で過ごすことを希望していた。
父と私は、その希望をかなえるべく
とりわけ父は、それはもう、全身全霊で
母の介護にあたってきた。
なのに、これは一体、どういうことだろう。

私は、いつもなら、ちょっと出かけるくらいのことは
黙ってさっと出かけるのに、なぜかあの日は、
「ちょっと銀行に行ってくるね」と父に声をかけた。
返事がなかったので、顔をのぞくと、
顔がゆがんでいるように感じた。
滑舌がおかしい。
次の瞬間、口からよだれが。

あかん!と思い、119番した。
あゆみの異変に気付いたときの119と重なり
誰が、いま、どういう状態なのか、を
まともに言えなくなった。

ようやく、状況を伝えることができ
ほどなくサイレンが聞こえた。
母を一人置いて行くことになるが
「すぐ戻って来るから」と心の中で母に伝え
私も救急車に乗った。

母はこの数時間前に、味噌汁を飲んだ。いちごを食べた。
だからきょうは大丈夫と思ったが、でも念のため
「早く帰ってほしい」とダンナに電話した。

父は脳梗塞だった。
処置が長引き、その間に
母は逝った・・・

なぜ、よりによって、このタイミング?
余命1か月と言われてから
半年も生きてくれたのに、なぜ今日なの・・・と
何度も思った。
母に考えあってのことなら
知りたいと思った。

今も、父に母の死を知らせることができずにいる。