外来小児科学会

2009/04/16

2008年8月30日〜31日に名古屋国際会議場で開催される、外来小児科学会でお話しさせていただきます。

その抄録です。

 

小児医療に期待するグリーフケア

若い両親と幼いきょうだいの未来のために

小さないのち 代表 坂下 裕子

 

「小さないのち」は、急性脳症により重い後遺症を残した子どもの家族と、死亡した子どもの家族の会として1999年4月に発足しました。

この数年後、死亡に関しては病名を限定せず病児遺族会とし、毎年二百数十名の会員を持続しています。

活動目的は、
①会員の心の回復
②子どもの病気に関する情報の収集と普及
③小児医療の充実です。

今回は、遺族会の活動を通して見えてきた遺族ケアのありかたについてお話ししたいと思います。

遺族と出会い、話し合うなかで、私は多くの医療者が思い描く遺族像と、実際の姿や言葉に、いくつかのズレがあることを感じるようになりました。

このズレに着目し、ズレを糸口にケアや医療そのものがより充実することを考えて、もうすぐ10年になります。

例えば、遺族が「カルテを見たい」と言うと、訴訟の文字がよぎるかと思いますが、遺族にとっては子どもがさいごまで灯した明かりを見出そうとする行為であったり、遺品に触れたい想いであったりします。

また、看取った病院に遺族はもう来たくないだろうと思われがちですが、アンケートでは94%の遺族会員が、「もう一度病院を訪ねるきっかけがほしかった」と答えました。

説明が理解できないまま苦しんでいる人、医療スタッフだけが記憶する亡き子の思い出を聴きたい人、改めて御礼が言いたい人など目的はさまざまですが、とりわけきょうだいの育児に悩む人が多い点が小児の遺族会の特徴です。

きょうだいとの死別が影響していると思われる様相を95%の子どもが示し、親は混乱します。

子どもの遺族へのケアは育児支援に直結するものであるといえるでしょう。

当日は、当事者がどのような配慮を小児科に期待しているかを具体的に述べるとともに、子どもの死という危機的状況に直面した人々が、悲しみのなかでとらえた医療のやさしさについても、体験談などを交えて紹介したいと思います。