自分の力で遺族を楽にするのではない自覚

2022/09/01

心のケアは、読心術ではない。

決めつけは、一番いけない。

相手の気持ちを、気持ち通りに受け取っていくには

やはり、しっかりと相手の話を聴くことで、

言葉にならない感情は、言葉では聴けないから

じっと「いる」ことに尽きると思う。

 

そういう話を、グリーフケアの授業でしていて

受講者の中に、響く気配を感じた。

その人の回答は

決して多弁でなく、静かな語り口。

 

前職に少し触れられたので

差支えなければ、何をされていたのか尋ね、

えーー、っと思わず言いかけた。

自衛官。

 

救助や救命の仕事は

なにはさておき人命を救うこと。

そういう職業から、心のケアに携わるとは

対極の仕事になるのではないだろうか?

と、つい思ってしまった。

 

それは大きな勘違いだった。

自衛隊では、助けた相手から名前を尋ねられても

名乗らないことになっているらしい。

いち個人が助けたのではない、という意識と

特定の人ではなく国民を救う

という意識のもと動いているからなのだそうだ。

 

この精神は、グリーフケアに生かされるところがある

と感じた。

グリーフケアを「したい」と考える人のなかに

悲しみから救いたい、と言い

笑顔を取り戻してほしい、と目指す人がいる。

 

それは簡単には無理です。

相手の変化を手応えにしては

ご本人にとって、負担になりかねません。と

申し訳ないが、釘をさすことがある。

遺族の変化は、本当にゆっくりだから。

 

そんな話も、授業ではしたが

自分の力で人を救っているのではない

という考えをしっかり持っているような人は

グリーフケアに向いている、と思った。

 

現在、どんな職に就いている人が

将来、私たちの仲間になっているか

わからないものだと実感した。