「言葉」にはそれまでの関係性も影響する

2023/10/13

歯の定期健診(クリーニング)の日で

歯科に行った。

待ち合いに座っていると、

70才くらいの男性患者が、受付の人から

「保険証お願いします」と言われ

渡すときに、何か言って渡していた。

 

いま何て言った?

よく聞こえなかったけど、呪文みたいな。

保険証と関係していること?

 

それに対し、受付の人は、特に反応を示さず

「お預かりします」と受け取った。

 

そのおじさん、私の近くに来て、座るとき

さっきと同じことを言った。

アハハ、それ?

しょーもな。

 

よっこいしょういち!と

さっきより大きめの声で。

さっきウケなかったから、

今度はウケたかったのだろう。

私は心の中では笑ったが、無表情を貫いた。

 

受け付けの女性は、

横井正一さんも、このギャグも、知らない模様。

私も同世代です、という顔をしておいた。

 

ほどなく診察室に呼ばれ

私は歯科衛生士さんの診察台に行くが

衝立越しに、隣の診察台は院長先生。

 

隣の患者さん、考え込んでいるようだ。

抜歯を思い切れず。

そりゃ悩むよね。

本人にとっては一大事だもの。

 

私は、顔にタオルを掛けられた状態で

こっちで同情した。

そしたら、無言でいた院長が言った。

「抜くしかないです」

のひと言。

 

このとき思った。

そんな簡単に言わないでよ

と思っても不思議はない言葉。

でも、この先生に言われたら、

なんか違う。

 

何でやろ?

やっぱり言葉は、

言葉そのものや、言い方で印象付けるだけでなく

関係性にも左右されるのかもしれない。

 

この患者さん、どれくらい通っているか知らないが

私は、ずーっと通っていて、

危なくなった歯も、助けてくれて

1本も抜いていないし

虫歯にならないためのメンテナンスを勧められて

先生の治療は、もう何年も受けていない。

 

そういう背景をイメージした

「抜くしかないです」は

言い方がどう、というところに感情は向かわず

仕方ないなあ、と思えた。

お隣の人のことだけど。