いとしのエリー

2015/04/13

それはダンナの入院がきっかけだった。
もう何年になるのか、ちょうど今の季節だった。
病院から、ケイタイにメールが届いた。
「梅ちゃん先生 とっといてー」。

梅ちゃんという先生を、とる?
録画ってことだよね。
で誰?

まさか、あのチャンネルの、あの時間帯のものとは
思いもしなかった。
お年寄りの番組という思い込みが、私たちにはあったから。

入院すると、たいてい同室者はご年配。
他の3つのベッドで、一斉にこの番組がつけられ
話題性を考慮して見始めたところ、
はまっていったらしい。
以来、我が家では、
朝の連続テレビ小説を観ることを、欠かさなくなった。

4月から始まった、いま放送されている番組も、
ようやく興味がもてるようになってきたが、
最初の1週間くらいは、二人で言い合った。
「エリーがいなくなって、寂しいなあ」

エリーとは、前回の番組「マッサン」の準主役で、実在の人物
ニッカウヰスキーの創業者の妻(実名はニタ)のこと。
確か私が生まれた年に亡くなっている。

異国に嫁いで数々の試練に直面し、
病気もし、流産もし、貧乏もして、里子を育て、
戦争が起こると敵国になってしまい、困難続きでありながらも
事あるごとに、「だいじょうぶ」と言い切る、その大丈夫さに
人は勇気を与えられた。
向かい風を追い風に変えてしまうほどの、精神の強さと安定を感じた。

エリーを演じた女優は、日本語がまったく話せなかった。
話せない人が話すから、より臨場感に溢れたのだろう。
ダンナも私も、彼女=エリー=リタが、大好きになった。

番組が終了し、私たちは喪失感に襲われ・・
向かった先は、イオンの酒売り場!
あった!!
スーパーニッカ「復刻版」。
エリーの死を悼んで創られたとされる、いわば愛のウイスキー。

ダンナはワイン派、私は日本酒派なので
長らくウイスキーというもの、口にしなかったが
今はまっているのは、ニッカウヰスキーの飲み比べ。
このまま酒浸りの生活にはまっていっては、いけないけどね。