誰より空気のよめなかった母

2015/04/17

ダイキは、この春大学を卒業した。
卒業の報告に行った先の1つが、
私には思いつかないところだった。
それは、「いきいき」の教室。
大阪市の学童保育のようなところで
卒業した小学校の校舎内にある。

ダイキは、中学の間も、高校の間も、大学の間も
折に触れて、いきいきの先生の顔を見に行っていた。
今回の訪問で、先生に言われたらしい。
「ダイキ君、昔から自分のこと見せるの、平気だったね。
亡くなった妹のことも、普通にしゃべってた」と。

「そしたら、何で隠してたん?あゆみちゃんの遺影」
と、私は尋ねた。
小学生のときは、リビングに遺影があるのが平気だったのに
転校して、中学生になったら、
友達が来ると、玄関で待たせ、遺影を親の寝室に移動させてから
友達を家に上げていたから。

「んー… 転校してるから、説明が必要やん。
説明はいやじゃないけど、
遊びに来たんやから、遊びに集中がいいかな、と思って」

ええ、確かに、と思った。
あれ?妹おったん?ってことになったら
おったよ。病気やってん。
みたいなやりとり、その次がちょっと難しいかも。

ところが、私が留守だったある日
母が、2階に上がってきて
えっ!あれ?なんで!あゆみちゃんの遺影がない!!
となり、2階じゅう探し回り、
「何であんなところにあったんやろう」と言いながら
友達の目の前で、リビングの定位置に、遺影を戻したという

中学生の男の子たち
遺影が何を意味し、それが誰なのか、瞬時に察しがついたらしく
けれども誰も、何も言わずにゲームを続けた
というのが実際だったらしい。

「そうやったんやぁ」と私。
「ほんま、ママ、まいったし」とダイキ。