亡くなった人の思いを知る

2016/04/12

朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」が始まり
早々に、お父さんは結核で亡くなった。
長女の常子は、10歳くらいだろうか。
父の遺言どおり、父親の代わりを務めるため
毎日泣かずにがんばっていた。
でも、父の机の上にあったみかんを目にして
我慢しきれなくなった。

あるモノが、亡くなった人を、ありありと思い起させる瞬間ってある。
常子の父は、みかんの食べ方が独特だった。
手で揉んでから剥いて食べる。

ちょうど、次の「つどい」でしようと思っていることだった。
「さよならのあとで」という詩集がある。
詩もいいが、あとがきもいい。

   誰かの言葉や、匂いや、音や、光や、空気や、風や、すべてのことが、
   その人の不在を静かに告げます

というくだりが、あとがきの中にある。
続けて、こういうくだりもある。

   けれど、私たちは思い出すことができます。
   その人のいた場所や、いつも座っていた椅子。読んでいた本、
   ずっと履いていた靴、微笑み、くしゃみ、声、指の先。
   その人がどれだけ私のことを愛してくれていたのか。
   そのことに思いをはせたとき、私たちは、
   再び、ゆっくりと立ち上がることができるのだと思います。

常子にとって、「みかん」は、
父の不在を告げるモノの一つでもあるが、
その父の思いを感じることのできる一つでもある。

特定の場所や、椅子や、しぐさ、が引き寄せる「思い出」もまた
その不在を告げるが、ただ不在を告げるだけでなく
その人に結びつくモノや光景は、その人のもつ気持ちや考え方にも結びつく
というのだ。

今度のつどいで、
あなたにとって、常子の「みかん」みたいなモノはありますか?
と尋ねてみようと思っている。