ご近所づきあいが必要になるとき

2016/04/29

テレビで、ゆとり教育世代を揶揄していた。
上司が親睦を考えて、飲みに行こう、と誘うと
「それって強制っすか?」と尋ねるのだと。
個を重視することから、勤務外までプライベートな時間を削ることに
抵抗を感じるのだという。

ふう。と思ってから、きょうも町会費を集めに回った。
新築の家がいくつも増えたので、町会に入ってくれるように
勧誘するのも、組長のおしごとだと言い渡されている。

白い若向きの家が建ったので、どんな人が引っ越してくるのかと思っていたら
住人は、なんと平成生まれ。(ゆとり世代)

「町会に入ってもらえますか」
と加入をお勧めしたら、
キター 
「それって強制ですか」

ほんまや。言う言うと思った。

「強制ではないんです」
と言って、続きが出てこない。

互いに沈黙…

いかんいかん…

「こども会もあります!」
と言ったものの、こども会って何をしているんだっけ?

「ええっと、ラジオ体操とか、盆踊りとか」
聞いている相手の表情は、硬い。

何のために入るのかなあ、と私も考え始めた。
そうだ。私は、ご近所づきあいを、とても頼りにしたことがある。
近所の人を見ると、駆け寄って、お願いしていた。

「もし母をどこかで見かけたら、連れて帰ってください。お願いします」

近所の人は、事情を察して、快く了解してくれた。
伝えておくだけでも、心強かった。

出先で、日が暮れてきたのに、家がわからなくなっている老人を見て
足がすくんだことがあったから。
どんなに心細いだろう。家族はどんなに心配しているだろうと。

私にはそういう経験があって、だからご近所づきあいを
と言いそうになって、
やめた。
二十代の核家族の人にとって、これこそほど遠い話。

ああ無理かも、と思ったとき
「いいですよ。2760円ですね?思ったより安いから」
と入ってくれることになった。

互いに沈黙する中で、頭をよぎった。
私が母の年齢になったとき
どこかで私を見かけたら、連れて帰ってください
と、いったい誰が頼んでくれるんだろう。
で、頼まれて引き受ける側が、この人たちだったりするんだあ。