遺族の言葉を毎日忘れず暮らせるだろうか

2023/10/18

いろんな授業のなかで、

よく言わせていただくことがある。

 

子どもを亡くした遺族に、

より寄り添いたい思いで

「私にも同じ年ごろの子どもがいますので

親御さんの気持ちはよくわかります」

ということは、

言わないほうがいいと思うこと。

 

そこは一見、共通項のようでも、そうではないので、

それよりも、

相手のつらさを察しつつ

プロとして最善を尽くしてくれるほうが

余程いいと思う、ということを

きょうは葬儀業の方たちを対象に話した。

 

そしたら、最後に質問を受けた。

通学中の事故で女の子を亡くされたご遺族に、

「私も同じ年頃の娘がいる父親です」ということを

言った、という人からの質問。

 

そのご遺族から、こんな言葉をかけられたという。

「娘さんを大切に。朝、送り出すときには

声をかけてあげてください」

そう言ってもらったが

気分を害されていただろうか?と。

 

私は、そのご遺族は、心の広い人だと思った。

そして胸が詰まった。

で質問者に尋ねた。

少しキツい口調だったかもしれない。

 

「あなたは、そのご遺族が言われたように

毎朝、必ず、娘さんに声をかけてきましたか?」

返ってきた言葉は、

「はい」。

 

あーー、良かったと思った。

あなたは素晴らしい、とも思った。

 

普通の暮らしのなかで

毎朝、毎朝、この子がいてくれることが

かけがえのないことで、失ってはいけない

と肝に銘じるように暮らし続けること

できないと思う。

 

でも、やさしい言葉をくれたご遺族の側は、

毎朝、毎朝、わが子がいない淋しさに

打ちひしがれて暮らしていく。

そんな辛く厳しい立場の人が

絞り出すように言ってくれた言葉を

心に刻んで暮らしていく人であるなら

子どもを亡くした親に、何を言っても大丈夫だろう。

同じ立場でなくても

対等な対話ができるだろう、と思った。