ひねくれるほど 愛しい

2016/08/13

あゆみが入院中
その生命のともしびが、いつ消えてもおかしくない
というとき
冬季オリンピックが開催されていた。
病院内も沸いていた。

さらにダンナまでも
院内の観客に混ざって、同じテレビを観ていた。
どういう神経なんだろうと
私はとがっていた。
なので私、ずっとオリンピックが苦手だった。

ずいぶん歳月を経て
今年、やっと応援できるようになった。
けれど、べつに生まれ変わったわけではない。
あるご遺族のブログに、「わかるよ。すごくわかる」と思った。

  体操の内村選手が金メダルを取った。
  内村選手の母親が興奮して喜んでいる姿が映っていた。←イスの背の上に立ってたネ

  以前、内村選手の母親は「しくじり先生」という番組に出演して、
  息子を溺愛しすぎて子離れできなくなり、
  息子に嫌われてしまったことを反省していた。
  そして最後に
  「息子にはただ生きていてくれるだけでいい、それだけでいい」
  と言って涙を流していた。

  その言葉に嘘はないのだろう。
  でも私はその時
  「生きていてくれるだけでいい」
  というその言葉の重さを、子を亡くして心の底からそう願う親の気持ちを、
  この人はわかっているのだろうかと思った。

  自分の子が金メダルを取って嬉しくないはずがない。
  飛び上がって喜んで興奮してしまうのも当然のことだ。
  私はその姿を
  「生きていてくれるだけでいい」
  と、そう言って涙を流した時のことを思い出し、
  冷めた気持ちでしか見られなかった。

「わかるよ」と思った。
そして、お母さんの言葉は、こうくくられていた。

  どこまでひねくれているのだろうか、私は。

「すごくわかる」と思った。

「愛しい」と書いて「かなしい」と読む
と辞書にも書いてある。
ひねくれてしまうほど愛が深い
という意味が書かれている辞書があってもいいと思う。