撫でたいきもち

2005/05/26

 JRの列車事故から1ヶ月経ちました。
現場を訪れたご遺族が、車両がぶつかったマンションの壁をなでておられる姿をテレビで見ました。崩れた壁を持ち帰る姿もありました。
大切な人にもう二度と触れることができなくなると、亡くなったその人が触ったことがある物でさえ愛おしく、最後に触れた物であれば、よりそう思えるとおもいます。

 とうこちゃんのママは、何年ぶりかで小児科病棟を訪ねたとき、そこにまだあったとうこちゃんの車椅子の、ちょうどとうこちゃんのお尻が乗っていたところを撫でてきたことを話してくれました。

 こうちゃんのママは、保育所の取り壊しが決まると、給食室の窓がほしくてたまらなくなりました。亡くなる前の日まで、朝はまずそこをガラガラっと開けて、給食のおばさんに「おあよー」を言っていた小窓です。

 ももちゃんのママが黙々とパッチワークに取り組むのは、ももちゃんが亡くなったときにドライアイスを包んだ綿を大切に残すためだったことを、ずっと後で知りました。最後にももちゃんの体に触れたものだから、葬儀屋さんにはぜんぶ置いて帰ってもらっています。

 うちの夫はというと… 寝る前にあゆみのほっぺたを撫でています。遺影の写真だからガラスの上からですが。いまも、毎晩。