つらい経験をしたきょうだい

2008/03/24

にこにこトマトさんの通信に出した原稿を加筆修正したものです。

 突然の病気で娘を亡くし、ちょうど10年が過ぎました。
親にとって山あり谷ありの歳月は、幼いきょうだいにとってどんなものだっただろう…
と、常々考えていました。
亡くなった娘には兄がいます。

 彼はまだ幼稚園児だったので、
妹の死をどう感じているのか、当時は言葉で聞くことがあまりできませんでした。
赤ちゃん返りが長く続いたことについては、
きっと妹の役割まで演じているのだろうと夫婦で胸を痛めたものです。
彼の幼いころの胸の内は、大きくなるにつれ次々と分かってきて
つい先日も、予想外の真実を知りました。

 それまでは子ども部屋で寝ていたのに親の布団でなければ眠れなくなったのは、
眠ると自分も死んでしまうと思っているのだろうと私たち夫婦は考えていました。
そうではありませんでした。息子は、
次は親を失うんじゃないかと考えていたと言うのです。
そうと分かっておれば何度でも話してやったのに…。
お父さんとお母さんは絶対にどこにも行かない。ずっと一緒だよ、と。
実際これは、家族と別れた後の子どもにとってのケアの要点であることをずっと後で知りました。

 そんな息子も今月中学校を卒業。
夫婦で卒業式に出席した夜、
こんなしんみりとした日には切り出しやすく、また妹のこと尋ねてみました。
「あゆみちゃんとの別れって、いまもダイキに何か影響与えてる?」
「んー あゆみがいなかったら今のこの僕ではないよ」
その言葉は、私自身がいつも自分に感じている事そのものでした。

 家族とのつらい別れなんて、ないほうが絶対いい。
でも、出会えたことが大きく、家族になれたことがかけがえのないことだと思えます。
そしてわが家では、
思い出すとつらいことは思い出すものにせず、
それぞれ常に引き寄せて考えていたのだと感じました。