10余年ぶりに踏み入れた世界

2010/09/15

1か月ほど前に届いた恩師からの郵便。
封を開けるのがこわかった。
思ったとおり、入っていたのは、演奏会のチケット。

音楽から遠ざかって、何年になるだろう。
もう戻れないし、今となっては聴くことさえ、つらい。
しかし指揮者であったご主人が亡くなられ
追悼コンサートということだから、行くことに。

コンサートホールに踏み入れることさえ、何年ぶりか。
いっしょにやっていた同級生たちが、客席にいないか見回したが、
いないようで、ほっとした。ところが
プログラムの中に名前を見つけ、愕然とする。

1つのことを、ひたすら続け、極めていく人は、素晴らしいと思う。
私のように、挫折し、別の世界に逃げ込んだ者は、
その人たちの傍に行くだけで、すくんでしまう。

音楽をやめたのには、いろんな事情が重なった
というのが本当のところだが
へそを曲げた一面もある。
恩師には、16歳から36歳まで、お世話になったが
あゆみを失い、あゆみにまつわることを始めようとするのを
反対をされた。引きずってはいけない、と。
言葉がどうではなく、
考えとして、そぐわなかった。

演奏が始まると
音楽の威力は、底知れない。
高校生のころ、大学生のころ、浪人生のころ(入学後に浪人した)
さまざまな自分を映し出していき
あゆみ抱いてレッスンに行っていた頃も蘇った・・・。
涙も、出た。

先生の演奏は、素晴らしかった。
子どもを失うことと、おしどり夫婦だった夫を失うことは
同じではないのかもしれないが
1年でこうも復活するからには
弟子に、しっかりしろと言って、いい人だったかも、と
今更ながら、認める気持ちになれた。

だからといって、今さら戻って、またできることでもないし。
いったい自分は、どこに向かって行こうとしているのか
再考しなければ・・・

開演中の半分くらい
母は、すやすやと眠っていた。
あんなに、行きたい行きたい、と言ったのは
私に行かせるためだったのだろうか。