母が急いで逝った理由

2014/05/05

水曜日、父の主治医から、手術の経過が順調
という説明を受けたのを機に、初めて父に
「大事な話があるのだけど」と切り出した。
「なに?… 園子のこと?」と返されると
すごく緊張が走った。

ずっと黙っていたことを怒るかもしれない。
想像以上に泣かれるかもしれない。
たった今、順調と言われたペースが崩れるかもしれない。

「ママ、亡くなったの」
「いつ!」
「救急車でこの病院に来た日」

父にとって、「この病院に来た日」であることが
衝撃的だったらしい。

ふと思った。
私は、父を搬送するために、母の臨終に立ち会えなかった。
そのことを、ものすごく悔やみ
少し、父を責める気持ちもあった。
よりによって、こんな大事なときに倒れるなんて、と。

けれど、父の、声を押し殺して泣く姿を前に
「黙っててごめん。でも、私も同じだから」
と心の中で言うことができた。
立ち会えなかったのは、父一人だけでないということを。

「お母さんは、きっと、お父さんを護るために、急いだんだよ」
と人から言われた言葉を
あーそうなんだあ
と素直に受け入れることができた。

けれど父は、
これから始まる過酷なリハビリを
何を糧にがんばればいいのだろう。
年老いて妻を失うつらさを、間近に見て、つらい。