天国はきっと雲の上

2022/03/23

亡くなった子どもに会うために

お墓参りをする人や

楽しかった頃に立ち戻るために

思い出の地を訪ねる人は、多い。

私はどちらもうまくできないため

独自に、あゆみがいそうなところを目指して

巡っている。

 

冬は、白銀の世界。

よく行く長野県は、もう春になってきたので

思い切って北海道に来てみた。

そしたら思った以上に、冬だった。

 

最初に乗るリフトは6人乗り。

あちこち行くけど、こんなに横長のリフト

見たことない。

さすが北海道、スケールが違う。

しかも革張りで、フードまで付いている。

それが、昇るにつれ

リフトは小さくなり、フードもなくなり、

山頂に向かうリフトは、

ついに一人乗りになった。

 

風が強くなり

気温も下がり

視界も悪くなり

勝手に私は、人間界から脱出と想定、

天国のすぐ近くまで行ける気になる。

 

終点に着くと、

吹き倒されそうな風と、凍える寒さ。

山の神様

あんまりご機嫌よくないのかな?

 

ほとんど何も見えない。

ここは雲の中なのか?

別に景観を楽しみに来たわけではないので、

お空に近づけただけで、いい。

雲の上まで行けたらさらに有難いのだけど、

きょうは限界だった。

 

あゆみちゃーん 来たよー

だけ言って戻る。

 

数メートル先が見えないので、

とにかく転倒しないように。

この余裕のなさの中では

いつもの「無心」に陥り

たった今あゆみに向かって叫んでいたのに

もう意識飛んでで、切り替え早やっ。

 

視界が開けて、傾斜も緩やかになり、

あーあ、もうここは人間界。

仕方ない。

私は雲の上では暮らせないから。