麻痺した手でピアノが弾けるようになった友人

2023/01/23

かつてピアノを仕事にしていた友人に会い、話を聞いた。

ピアノから離れたのは、重い難病を患ったからで、

病状が落ち着いた頃に、会ったとき

「ピアノはもう弾けない」

と聞いて衝撃を受けた。

 

左手が麻痺し、曲がっていた。

右手もよく動かない。

 

「いつかまた弾けるよ」みたいな

安易な励ましなど、私はしなかったが、

内心は、きっと弾けると思っていた。

 

そしたら、きょう、

少し弾けるようになったと聞き、

体ってすごいな、と思った。

元には戻らなくても、少しずつ変化する。

 

さなかでは、詳しく聞くことなどできないが、

少し良くなって、初めて知らされたことがあった。

 

手に麻痺が残ったとき

主治医の先生が、「ごめんね」と言われたそう。

理由は、障害の等級が低く付くからだった。

 

右手(利き手)が麻痺するのと、左手では、

級が異なるらしい。

級が高ければ、医療費がほぼ免除される。

 

もうピアノは弾けない、と本当に思っていたら

右手も左手も、あまり関係なかったんじゃないだろうか・・

でも彼女は、

先生に謝ってもらわなくていい

と思ったと言う。

 

「左手だけで演奏を続けた舘野泉さん

のようなピアニストもいるけれど」

と、彼女は前置きをした上で、

「私にそこまでの才能はないから

右手だけででも弾けたら、と思ったの」

と教えてくれた。

 

片手だけになっても、弾き続ける人は

きっと、もう片方の手も、変化し始める

と思っていた私の勝手な思い込みは、当たり、

左手が、少し動いていた。

 

両手とも、普通に動くのに

まったく弾くことがなくなった私が

心の中で応援し続けているというの、

おかしな話だと思うが。