なぜ「安心しろ」と言ってくれないのか

2023/10/24

北アルプスで遭難していた大学生と男性が

きょう救助された。

5日間も消息が不明になると

親は生きた心地がしなかっただろう。

 

県警のヘリが見つけ、

ヘリから降り立った隊員によって

ヘリで病院に搬送された。

このとき

隊員からかけられた言葉に

私は一瞬、戸惑った。

「まだ安心するな」

 

正確には、

「がんばれよ、まだ安心するな。

病院まで、病院まで」

 

短い言葉だが

ぜんぶを見れば、わかる気がする。

でも、「安心しろ」のほうが

もっといいのではないか?

と思ったのだ。

 

私は、窮地に立たされたとき

欲しい言葉として「大丈夫」があって

知人の、ドクターカーに乗っていた救急の看護師に

そのことを話すと、彼女は

事故現場に到着し、けが人に接触した時点で

「大丈夫やで!いま助ける!助けるから!」と言う

と言ってくれた。

この時点で救われた気がした。

 

でも、そうとは限らないのかもしれない。

大丈夫とか、安心しろ、と言ってしまうと

そこで命が危なくなるようなことが

あるのかもしれない。

 

「安心するな」は

きびしい言葉のようだが

命を守るための言葉で

思いやりに満ちている言葉かもしれない。

 

ぜんぜん関係ないのに

ふと、あの水難記事のことが浮かんだ。

流されたわが子を、沖まで助けに行って

必死で泳いで、一緒に戻ってこれたのに

お父さんだけが沈んでいったこと。