しあわせをポケットに詰めこんで
2014/04/28 朝の8時半に病室に行くと
父はもう手術室に移動する準備が整っていた。
終わったのは19時。
先生はほんとうに大変だったろうと思う。
待っているだけでも、疲れてしまったが
家に帰ってから、また少し母の部屋を片付けた。
毎日少しずつ、母の遺品を整理しながら
たまらなく淋しくなったり
しあわせの記憶を呼び覚ましてもらったり
こころが忙しい。
久しぶりに見るカシミアのコートが出てきた。
私にとって、このコートは、
あゆみの誕生の日とつながる。
つまり、人生で一番しあわせな日と。
出産を終え、母が呼び入れられたとき、
初めてみるこのコートが、素敵に見え
すごく似合っていると思った。
しあわせすぎて、目に入るものすべてが
素敵に見えたのかもしれない。
きょう、何気なくポケットの中を確かめてみると
紙切れが出てきた。
塚口駅前にあるパン屋のレシートだ。
97/01/13 16.06
という印字の時間帯は
あの、手を取り合って喜んだ数時間後を示している。
なぜ、ポケットに入れたままにしているのだろう…
母も、こんな些細なことで
しあわせな時間を持ち続けようとしていたのかもしれない。
ほんとに、そうなのか、どうか
確かめたいけれど
もう 母はいない。