自分の子は生きてほしいし

2018/07/07

大雨警報が出た日の朝
土砂降りの中、ダイキは上下カッパに身を包み
いつもより早く家を出た。
休校であっても関係ない。

翌日は、土砂災害の避難勧告も出ていたが
やはり行かなければならない。

駅から先は、バイクでしか行けない。
しかも急な坂道。
ちょうどテレビで、豪雨の中を
バイクで危なげに走っている人の姿を目にする。

ダイキが小さいころ
私は、病気の子どもの助けになる職に就いてほしいと
折に触れ、言っていた。

大きくなって、
拒絶された。
「病院で働く人にはならないよ」と。

結局、病院ではないが、子どもと関わる職を選んだ。
そうすると、その子たちを守る立場となる。
災害レベルで言えば
その子たちの命を守る立場に立っている。

私は、そこまでのことを考えていなかった。

大震災のとき、必ず、
対象者を守って、命を落としてしまう専門職がいる。

自分の命も危ないと思ったとき
もう逃げてほしい。母さんは。
そう呟いてしまったとき、
ダイキは、一瞬、え?という反応を見せたものの
返事はなかった。

そうだよね。
一人逃げて、逃げ切れたとして
その先に、幸福な人生は待っていないのかもしれない。
心から笑える日は、きっと来ないのだろう。

災害、怖い。