体験者が言う「あのときのことを思えば」

2020/07/08

また昨日のつづき。

 

世間一般に、「私は、まだ恵まれているのかもしれない」

と思えるのが、

「誰々」という比較対象があって初めて

思い至る人が少なくないようだ。

 

このあたり、責められないかな。

造詣の深さは、経験の深さが生むようなものなので。

 

一方、子どもを亡くした親は

誰かの、何かを、切り取るように見て、

直面している苦悩と照らし合わせて、思い至る

ということは、(ほとんど)ないように思う。

 

そのことが、よくわかるのが

子どもを亡くした親が、よく言う言葉。

「あのときのことを思えば。」

 

「あのとき」とは、子どもが亡くなったとき。

あるいは、子どもが苦しんでいたとき。

 

あくまで比較対象としているのは

当時の「自身」なのだ。

「あのときのことを思えば、これくらい」

「あのときのことを思えば、何てことない」

 

ただ、この言葉は、

年数を経て、生活していく中で聞かれる言葉だ。

 

日の浅いうちは、「あのとき」にならないので

ほんとうに、どう生きていけばいいのか

表現しえないほどのもの。

筆舌に尽くしがたい、とは、このことだ。