ビデオを撮りたい親と撮りたくない親

2021/03/13

卒園の季節

ずっと以前、あゆみが元気だった頃

私はよその子の卒園式に行って、ビデオを撮った。

 

そのお宅にはビデオカメラがなく、

「卒園式くらい撮っておくといいのだけど・・・」

と、お母さん呟かれた。

それはそうでしょう。

我が家などは、何でもない日でも撮って

大きくなったら見せようと思っていたから。

 

そこで私は、卒園式に忍び込み

ご主人にバレないように、入念に、お子さんを撮った。

なぜなら、ご主人、動画を残すことに

猛反対の人だったから。

 

最初私は、相当な観念の持ち主と想像した。

思い出は記憶に刻むもの、とか

今この時がすべて、だとか。

 

そうじゃなくて、と奥さん教えてくれた。

ビデオを撮ると、失うみたいな気になる

って、

どういう感覚なのだろう?

明治?江戸時代?

 

奥さんの気持ちも旦那さんの気持ちも考えて

卒園式に忍び込んだ私。

それからしばらくして

あゆみは、突然、亡くなった。

 

ビデオを撮りすぎたから、とか思ってないよ。

あのお父さんの感覚も、私にはない。

でも

何がいけなかったんだろう

ということは、何度も思ったし

今でも思う。

 

しかも

あんなに撮った動画

ぜんぜん見れないまま暮らしている。