着物を着たことは一回だけありました

2022/05/22

私も着物、着てみたい、と言ったこと

口からでまかせ、というわけでもないので、

家に帰ってから、和ダンスを開けてみた。

 

結婚のとき、一揃買うものか?と

無駄な買い物をしたと思ってきた。

一回も、一枚も、着たことないんだから。

 

でも、着れば無駄にならないな。

どんな着物、持ってたっけ?と

一つ目の引き出しから包みを取り出し

包みを開いて、着物を見て

手が震えた。

 

一回も着てないんじゃなかった。

一回だけ着た。

この喪服。

 

あの日のことが、わーっと蘇った。

あゆみが亡くなって、家で眠っているのに

わたしは美容院に行っている。

どういう髪型にするか尋ねられ

着物を着ます。とだけ言い

美容師さんは、お祝いごとと思っただろう。

なんでもいい。着物を着れたら。

 

着せてくれたのは姑だった。

帯をしめ上げるとき

とても小柄な姑のしていることなのに

私は足元がよろけ、倒れそうになった。

立っているだけで精一杯だったから。

 

今思えば、喪服を脱いで、しまってから

このタンスは、もう

開けられなくなっていたのかもしれない。

 

着物を着ようかなぁ、とか

着付けを習いに行こうかなぁ、とか

なんの気なしに言ったりできるくらいに

変化している自分に、自分が驚く。

 

着物着ても、文楽に行ったりはしないけど

小さないのちの「つどい」に現れることは、

あるかも。

自分の変化を聞いて貰いたくなったら。