「幸せでした」なんて聞きたくなかった

2024/06/25

お母さんを亡くされたかたとお話しして、

思いがけず母のことを話していた。

普段はお子さん亡くされたかたと会うので、

思えば、あゆみのことしか話していない。

 

さいごに会話したこと

の話になり、

私は、「死なんとって・・・」と無理を言った。

そしたら母は、

「死なないよ」と返した。

 

このときの、表情が、

ん?何を言ってるの?

という意外なことのような反応だったので

本当に死なないでくれるような

安心感を得て、

もう1回言ってみたい気持ちになった。

 

なので次の日も同じことを言った。

「死なんとって」

そしたら、母は、

「幸せな人生でした」と言った。

 

この言葉は、おそらく最高の言葉ではないだろうか。

でも、そのときの私には、

「さよなら」に聞こえ、

「そんなこと言わんとって」と言いそうになるが

言えなかった。

 

母は、末期がんになる前に、

認知症になっていたので、

込み入った会話になると、言葉が途絶える。

だから、追い込まないようにしながら、

ふと思った。

 

1日前に、「死なないよ」と返した言葉は、

認知症で状況が理解できないためだったのだろうか・・?

 

そうではないと思いたかった。

生きていたい

一緒にいたい

という思いから発していた言葉だと嬉しい。

 

認知症でも、大事なことは「わかっている」

と思いたいから、

1回目と、2回目で、違うことを言って

わかりにくくなっても

はっきりさせるような会話にはもっていかなかった。

 

2回目の言葉は、いやで、悲しくなったのだけど、

時間が経って、振り返れば

いい言葉に思える。

 

そんなこと思いながら

涙が出てきた。

あゆみのことや、お子さんの死以外で

涙が出たのは、珍しい。