目には見えない母と子を繋ぐ糸

2024/07/14

お子さんを亡くされたお母さんに

講演していただくため準備を手伝っていた。

その原稿の、最後のほうで

不思議な出来事があった。

 

ずっと意識がないまま闘病していたHちゃんが

息を引き取る少し前に

お母さんにもHちゃんと似た症状が現れた。

このときお母さんは、

自分も死ぬのかな?と思ったという。

 

救急車で運ばれて、検査を受けたが、

倒れた原因はわからなかった。

このとき、早く帰ってきて!と電話が鳴る。

急いでタクシーに乗り、帰り着くと

ほどなくHちゃんは旅立った。

 

お母さんを襲った症状は、一体、なに?

 

私は、勝手に、いろんなことを想像した。

本当はお母さんにも同じ病気が起きかけたが

お母さんには生きてほしい意思が働いた。

誰の? Hちゃんの?

 

お母さんも、あっちの世界に行きかけていたが

こっちの世界に突っ返された。

誰に? Hちゃんに?

 

ぜんぜんわからないことで、

講演を聞くのは医療者だから

そういうことを言う場ではなく

私も自重したけれど、

すごく不思議な感じが、ずっとしている。

 

意識がないまま眠っていたHちゃんは

意思をもっていたような気がし、

さらに、天使に近づいていたHちゃんには

不思議な力が宿っていたような気さえし、

そのあたり、さだかではないけれど

間違いなく「ある」と思えるのは

目には見えない、母と子を繋ぐ糸のようなもの。