亡くなった人の「ぶん」は誰も貰えない

2025/02/07

映画「歩いても歩いても」で

私が気になったのは、

長男が命をかけて助けた少年との

会話の場面。

 

好きだった演劇はやめてしまっており

100キロくらいの巨体で

就職は決まっていない。

バイトを続けるつもりで、

「元気くらいしか取り柄がなくて」

ハハハ!と笑う。

 

母は、青年のすべてが気に入らないようだ。

それは私も感じた。

明るい、素直。でも

気楽すぎる。怠惰すぎる。

 

「あのとき助けて貰わなければ

今の僕はここにいないので

申し訳ない気持ちと感謝の気持ちで

一杯です」

と言う「今の僕」を問い直すことは

彼にはないようだ。

 

最後にこう言う。

「じゆんぺいさんの分までしっかり生きます」

私がよくひっかかる言葉だった。

 

亡くなった人の分まで、という言葉、

名台詞のようによく言われるが、

私は亡くなった子がもっていた分は

亡くなっても他人にあげたくない。

その子の分は、その子のもの。

 

最初に観たとき、聞こえにくかったが

父親が最後にぽつり一言もらす。

よく聞くと

その言葉は私の感覚を代弁していた。

「じゅんぺいの分までって、

誰に断わってそんなことを。」

 

ほんと、そう。

亡くなった人の分を

勝手に貰ったつもりになる人いるけど

譲る権限は、遺族にだってない。

本人にしか。