匂いの記憶は「あの日」の記憶

2025/10/03

私はあんまり鼻が利かない。

「鼻が利く」には、2つ意味があって

嗅覚が敏感であること、と

隠し事などを見抜く能力、で

1つ目は、「効く」と書いて良さそうなのに

鼻に関しては、どちらも「利く」のよう。

 

私は、どっちの利きも良くなく

特に、匂いがよくわからない。

部屋の匂いとか、人の体臭とかも。

なのに!

線香の匂いにはクラクラしてしまう。

 

あゆみが亡くなった、すぐあとに

入ってきた匂いが線香だった。

まだ眠っているように可愛いのに?

いきなりこれは何?!と。

 

姑からも、随分怒られたけれど

仕方がない。利かない私の嗅覚が

利き過ぎて感情を刺激するのだから。

 

もちろん人それぞれで、

喜ぶそうよ、必要らしい、

と聞き、してあげる人。

してあげられることが限られるから

せめて、という思いもあるかもしれない。

気持ち、わかる。

 

姑も亡くなり、こんな格闘もおさまり

匂いのこと、考えなくなっていたなか

つい先日、一人のお母さんから

あー、確かに、と思う話を聞いた。

 

お子さん亡くなって、数年が経ち

お葬式の匂いだ!と鼻が利いたのが

花だったという。

 

数年ぶりに、御供の花をいただき

立派な花かご。

中でも際立つのが、カサブランカ。

すごくいい香りを放つ。

だから、すごく記憶に残る。

 

一気に、あのときに引き戻される

というのは、同じ現象だ。

線香の匂い、花の匂い、ほかにも

人それぞれあるかもしれない。

 

高価なものをくださった人の気持ち、

考えなければと思う。

思うが、どうしようもないのが

嗅覚。

 

匂いの記憶と、出来事の記憶が

これほど密接に強力に結びつくこと

あゆみのこと以外には

普段鼻が利かない私には、ないかも。