8月6日の忘れることのない人

2020/08/06

きょう8月6日は、広島に原爆が落とされた日。

小さい頃から、毎年この時期に、母から聞かされていた

原爆や戦争の悲惨さ。

特に震える思いがしたのは

影だけが建物に残って、その人の姿が消えてしまったこと。

 

私は、修学旅行が広島ではなかったので

修学旅行生が聴く戦争体験の話は、

どうすれば聴けるのか、ずっと考えていて

確か広島市の教育委員会に相談した。

 

そしたら個人的に講演依頼をしてください、と

岩本さんという高齢の女性を紹介してもらった。

 

岩本さんは、快く待ち合わせの場所に来てくださった。

このとき、この講演を聴いたのは、

私と、母と、小学生だったダイキの3人。

あまりに勿体ないこと・・・

 

だから一言も聞き漏らさないよう

聴き入り、岩本さんの姿に見入った。

 

原爆が落ちた瞬間のこと

無心に逃げたこと

混乱に巻き込まれたこと

聴衆がたった3人であることを度外視して

詳細に、切々と

真剣な面持ちで語ってくださった。

 

そして語り終わったとき、

すーっと、柔和なお顔と、穏やかな口調に戻られ

でも私は身動きができない思いだった。

 

日傘をさした、小柄で細身の岩本さんが

見えなくなるまで見送った。

体が悪いとおっしゃっていたので

本当に有り難く、申し訳ない気持ちで見送った。

それから暫くして、新聞で

岩本さんが亡くなった記事が出た・・・

 

私も講演に呼ばれることがあるが

たとえ集まる人数は少なくても

そこにいる人は、真剣に聴こうとするかたなのだから

こちらも真剣に、心をこめて、という考えは

岩本さんが授けてくれたもの。