毎日どれだけ「目」のお世話になっていることか

2023/03/10

スキーは、時々レッスンを受ける。

受講中、つまり習っているときは

子どもの頃のようになるので

様々なしがらみからも解き放たれて、いい。

 

最初にリフトで一緒になった男性に、

「きょうは宜しくお願いします」

と挨拶したら

「今シーズンから片目になってしまいまして」

と自己紹介のように話された。

 

えっ、となり、

一瞬考えた。

かつて私自身「子どもが亡くなったので」

のように話したとき、

えっ、なんで?という反応よりも

聞こえなかった、かのような反応(スルー)のほうが

戸惑いを感じたことを思い返し、

ご自分から話されたことに対しては、

もう少し触れてもいいかもしれない、

と思った。

 

お怪我ですか?と尋ねると、

詳しく教えてくださった。

 

貧血で倒れたとき、頭を打って、

視神経を損傷し、さらに、

24時間以内に手術していれば

見えるようになる可能性があったのに

原因がわかるまでに時間がかかり

手術のできる数少ない病院に行ったときには

成すすべがなかった。

 

手術ができる医師が目の前にいながら、

しかも

眼球じたいは無傷のままで

諦めきれなかった

と胸中を語られた。

 

私は言葉を失う。

 

「受け入れるしかないんですよね・・・」

と、つぶやかれたとき、

リフトが着いてしまった。

 

こんな場所で尋ねるんじゃなかった・・・

 

何回目かにリフトに乗ったとき、

またその男性と一緒になったので

「スキー、続けられたんですね」

と言うと、お話の続きを話してくださった。

 

倒れた日というのは、

スキーブーツを買いに行った日で

嬉しくて、滑りに行く気、満々だった。

だからこれからも、予定どおり生きよう

と思われたそうだ。

 

なんと前向きな。

片目が見えなければ、

横や後ろから滑って来られたら、怖いだけでなく

前方だって、遠近感がなくなったら・・・

そんなこと考えていたら、

「スキーよりテニスのほうが、しにくいです」って。

 

「目薬入れるとき、

見てたんですよね。

違うところに垂らしてしまうんですよ~」

と、茶目っ気たっぷりに話してくれたが

私たちは、目が大事、とはわかっていても、

両目だからできていることや

片目では難しいことが

どれくらいあるのか、考えもせずに

毎日暮らしている。