売り飛ばしてしまった家を見に行った日

2024/01/25

亡くなった子と暮らした家

私は売ってしまったが

外から見るだけでも、見たくなって、

行った日のこと。

 

近くの角を曲がるころ

ドキドキし、

何のドキドキだったんだろう。

 

中にいるような気になったり

ドアを開けそうになったり、しないか?

 

時間が戻ればいい気持ちが

普段にも増して込み上げて、

抱えきれなくならないだろうか?

 

家の前まで行くと

立ち尽くして

何分間くらいいただろう。

 

中から人が出て来たらいやだな

と思った。

 

自分はもうこの家の住人ではないこと

重々承知していても

知らない人が出てきて

念押しされてしまうのは。

 

近所の人も出て来なくて良かった。

「あらー坂下さん、どうしたの?」

とか言われても

来た理由を言ったら、ドン引きされる。

 

「あの頃が愛しくてたまらなくなって」

なんて打ち明けたら

大丈夫かいな?この人・・・って。

 

でも、私にとっては

つらくても、行く価値あった。

ガレージのココのところに

ベビーカーに乗せておいたら

生協の配達の人があやしてくれていた

とか、急に思い出せることがあって。

 

1つでも記憶が戻ったことで

行って良かったと思えた。

 

最後に、大きく深呼吸した。

ここの空気には

あゆみの呼吸した息が

わずかでも混ざっているかもしれない

そんな気がして。