生まれて最初に猛反省した日のこと

2019/12/07

神戸のおばちゃんの家に連れ去られた話のつづき。

 

おばちゃんは助産師なので、朝、病院に行ってしまう。

私は、その家にいた恐ろしく年を取ったおばあちゃんと

昼間は2人きりで過ごすことになった。

小さくて、腰が90度曲がっていて、おとぎ話に出てくるような老婆。

 

こんな年取った人、見たことがなく、最初おびえたが、

このおばあちゃん、めちゃめちゃ優しい人。

退屈していたら、近所の商店街に連れて行ってくれた。

何軒かの店では、私が預けられて悲しそうにしているので

10円くれたのだ。数軒で、数十円。

これが嬉しかった!

 

嬉し過ぎて、ポケットに入れておけず、ずっと触っていたら

手から転げ落ち、どぶ川に落ちてしまった。

ここまでの経緯は、実はほとんど記憶になく、

どぶ川の傍で、茫然となる自分は鮮明に浮かぶ。

 

おそらく、おばあちゃん、諦めようと諭したのではないだろうか。

でも諦められないのだ。もう一度、この手の中に戻ってほしい。

私の思いの強さに、おばあちゃん、よし!となり、

腕をまくり、どぶ川に手を突っ込んだ。

 

私、このとき、とてもいけないことをしたと思った。

もういいと、心から思った。

でも、おばあちゃん、突っ込んだからには!という感じで

川に身を乗り出し、泥をかき回す。

ついに、10円玉を引き上げてくれた。

おばあちゃんの手は、腕まで泥まみれになってしまった・・・

 

自分の不注意が、こんなことを引き起こしてしまった。

わがまま言ったがために、人をこんな目に合わせてしまった。

ということと、

出会って間もないのに、全力で自分を守ってくれる大人がいる。

ということを、

3才の私は知り、一生、記憶に刻んだのだった。

いい子じゃないのに、丸ごと受け止めてもらった、最初の体験だったように思う。

 

もう、ずっとこの家で暮らすことになっても、

わたし、やっていけるかも、と思い始めた頃、母が迎えに来た。

家には、もう少し若いおばあちゃん(父の母)がいて、

このおばあちゃんも、めっちゃいい人。

コワ~イ母は、仕事でいつもいないので、

家のおばあちゃんと、ぬくぬく、ゆるゆる暮らす日常が戻った。