思い出したら辛いと忘れられていく

2021/04/02

途上国の子どもに医療を施す吉岡秀人医師の

活動や言葉を、一人のお母さんに教えてもらった。

吉岡先生は、亡くなるとわかっている子どもも治療する

その理由を、こう述べておられる。

 

「この子が生まれてから、一回も良くならなかったら

辛い記憶でしかないから、家族にとっては、もう

忘れられていくんですよ、遠い記憶として。

思い出したら辛いから。

だからとにかく、生きている間に

家族にも、もちろんこの子にも、一度だけ

良い記憶を残しておきたくて、手術したんです」(一部省略)

 

先生の言葉の中で、心に突き刺さったのは

「思い出したら辛いから」のところ。

 

思い出すことが辛い親、たくさんいる。

思いというのは、人それぞれ、自由であっていい。

思い出したくないことを、思い出さなくていいだろう。

ただ、先生の言葉にもあるように

そうすることで「忘れられていく」

このことが、ちょっと気になる。

 

愛しい愛しい我が子の

一部を忘れる、あるいは、部分的に覚えておく、

ということを、本当に親は望んでいるだろうか?

 

我が子に関する、どんな些細なことも、大事にしたい

丸ごと抱きしめてあげたい

という思いが、いつも、ひしひしと伝わってくるのだ。

 

ここに、矛盾とも言える二重構造が見え隠れするのは

私だけだろうか・・・

 

今、当会では、

子どもの発病~闘病~最期までを

私と一緒に記録する活動を、「有志で」進めている。

この取り組みの原点が、ここにある。

 

思い返すと、つらい、けれども思い返してみる。

つらいからと

わが子の一部を、忘れてしまわないように。