やっと俳優になれた兄が俳優をやめそう

2022/07/19

俳優になった兄が、久しぶりに来た。

兄のことは日記にもよく書いているが

定年まで地味に真面目に会社員をやって、

現在はそういう人になっている。

撮影で、民家が必要になったら部屋を貸すので

大勢の人とうちにやって来る。

 

終わって皆さん帰られてから、尋ねた。

私「きょうは何の役?」

兄「法事に参列している人」

 

好きなことに関われているだけで幸せなんだろう

と思っていたが、

ちょっと悩んでいる様子。

 

私「通行人とか参列者とかしか役が来ないから?」

兄「そういうわけではなくて・・・」

私「いいやん。定年まで勤めあげてるんだから」

兄「自分の存在意義とか存在価値とか、考えるようになって」

 

えらい難しいことを、と思って、

話を聞いて

「それがいい!」と言い切った。

 

「コロナ」の影響もあって、撮影の機会が減り

空いた時間に、ボランティアを始めたらしい。

そしたら俳優をする時間がとれなくなってしまった。

ボランティアに行く先は、(知的な)障がい者施設。

 

待ってくれている

必要とされている

純粋すぎる

 

なるほどー

お金は要りません、と思っている人たちが

貰ってうれしいものが、

ぎっしり詰まっている所の一つだ。

 

私、思った。

「存在意義は、自分が満足を満たすだけでも得られるけれど

存在価値は、相手がつけてくれるものでもあるよね」

兄、頷く。

 

ずっと夢を追ってきて

ようやく実現したはずの映像の世界よりも

さらに惹かれる世界を知った、ということだ。