あの世の父に文句の言いようがない

2025/03/08

高圧電線に竹が届きそうなので切りたい

と言う男性は、時間通りやって来た。

電力会社の、高圧電線を管理している人。

 

どこにある、どんな山なのか・・?

聞けば聞くほど、最悪な山だった。

7000ボルトの電線が上を通っていると

土地の価値がない。

 

そうか、売れないなら

竹を伐採して別荘でも建てるとしたら?

あかん。竹はいくらでも生えてくるから

床下から突き上げられてしまう。

ていうか、自宅すら手放したいのに

別荘など建てるわけないし。

 

もう、相手の顔を見据えて

「いりません?タダでいいんですけど」

と言ってしまうが、

沈黙が続いた。

 

「そんなこと言われてもねえ」と

こっちからツッコミ入れたら

しょっちゅう言われているらしい。

 

さらに最悪なことに

新しい法律ができて、

名義を書き換えずに土地を放置していると

罰金が科せられるようになったらしい。

嫌でも私のものにされてしまう!

 

もう言葉を失っていると、

「買い取ることはできませんが

ほかに何かお役に立てることがあれば

と思って来させていただきました」

と言われて、はっとした。

 

書面にサインするだけで仕事は済むのに

父の負の遺産について

どこにある、どんなものなのか

事細かに教えてくれた後、

死んだ親には文句の言いようがないため

つい愚痴ばかりになってしまい

そしたら、「代わりに聴きます」

と言われた。

 

なんでそこまで・・・?

 

尋ねると

「自分の仕事は、いやな思いをさせてしまうことなので

(私と同様の反応の人とばかり会っているらしく)

いやな思いを、事務的にさせてしまっては

大変申し訳ないので

せめて、お会いして、

できる限り説明させていただこうと」

と言われ、その姿勢に胸が熱くなった。

 

普通、逆だなあ。

嫌がられること知らせるなら

会わずに済ませられる手を考えるだろう。

 

見送るとき、御礼を言った。

「わざわざ2度も来ていただき

ありがとうございました。

教えてもらった話は、いいこと1つもありませんでしたが

こうして親切にしてもらい

もう父のこと、

ボロカス言うのはやめておきます。」